スパイス or 救世主?

Numberに、PK戦を外してしまった羽生を抱き起こす
選手たちを捉えた一枚の良い写真が載っていた。
静止画で見たいと思っていたので、
カメラマンのセンスに脱帽。
記憶に残る一枚になった。
PKを外し、倒れ伏した羽生の姿が、こんなに心に残るのは、
多分、彼が誰よりも「責任」とか「使命」と言ったものを
一番に心に刻み込んでピッチに駆け出して行った選手だからじゃないかな。

アジアカップを通じて、オシムさんは交替の一枚目のカードに
必ず羽生を使っていた。
見ている誰もが、羽生が入れば試合に何らかの動きが生まれる、
との期待を持って見送った筈だ。
だけど、羽生が劇的にゴールを決めたり、決定的なPKを貰ったり、
そこまで期待していただろうか。
送り込んだオシムさんは、「羽生の様に動け!」と言いたかった筈。
その任を理解しているのは、送り出したオシムさんと
当の羽生だけ、迎え入れる先発組の選手には
イマイチ理解されてなかったように見える。
何故、羽生なのか。
中にいる選手たちは、もしや羽生がオシムの教え子だから
使ってるんだ、なんて思ってないだろうな(怒)

途中投入された羽生には、入った途端苛立ちが伺える。
中の選手との温度差が、その苛立ちに表れているようだった。
オシムの意図を正確に理解し、
羽生と言うパーツを利用しようとしない選手たちに対して。
羽生が入れば動いて掻き回してくれるので、
そう言う役目は彼に任せるか、となり、羽生一人だけが動き回るだけで、
交替を生かしきれない選手たちに対して。
これじゃ、まるで
「ヒデにボールを預けたら、後は何とかしてくれるだろう」
と言う動きの顕著だったジーコJAPANから丸っきり進歩していない。

解説人までもが、羽生の登場は膠着状態を打開する為であって、
結果としてそれが出来ない試合に対し、
羽生が入っても天を決めた試しはないとか、
動き回っているだけ、などと言い出す始末だ。
一体、どれだけの責を羽生に負わせる気なんだろう。

羽生には何かをして貰いたいとオシムさんも願っているだろうが、
むしろ、後半の、相手もつかれている嫌な時間帯に、
指揮官として、彼の様に労を惜しまず動き回る選手を出す、
相手に疲れが見えてる場合と、試合が動かない時の
常套手段の作戦を実行する為に、当り前に羽生を出す、
そう言う戦略でしかない気がする。
幾らリードしていようと、ここで出て来て欲しくないタイプの
選手交替をされれたら、焦りや苛立ちも出る、
そうするとミスが生まれ、チャンスが訪れる確率は高くなる。

ジェフの選手は与えられた役目を懸命にこなそうとする姿勢が見えるが、
そうでない、オシムの教え子ではなく、それぞれどんな根拠があるのか知らんが、
自負心の強い選手たちは、
「自分の出来る事はここまでだから」
と言ってるように見えてならない。
オシムさんのやり方には従っているが、
従っていると思い込んでいるだけだ。
他力本願とまでは言わないけど、何か、
やってる事に対する自己責任から生まれる情熱が見えてこない。
言う通りやっていれば、結果がどうあれ、
自分の責任はかなり軽減されている、と言う計算を
頭の中でしているのではないか、と勘繰りたくなる。
負けると言うことの悔しさを、二度と味わいたくない、
と言う断固たる決意みたいなものは、例のドイツ組からは感じられない
高原以外は。

一対一を仕掛ける選手はいなかった、と言うのが
全てを物語っているんじゃないか。
オシムさんのルールに従いながらも、ここぞと言う時は
自分で責任を取る覚悟で、目の前の物事を打開していく、
勇気を持たないといけないだろう。
中村憲剛を、叱り飛ばしても次の試合にはきっちり起用した、
オシムさんはそんな心の狭い人物ではないと思うよ。
だからこそ、起用してくれたオシムの期待には、
ちゃんと応えて欲しいと思うんだよね。

羽生は「救世主」なんかじゃない。
一石を投じる、くらいの役目だった。
それを一生懸命やろうとしたから、あの涙があったんだと思う。

Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2007年 8/16号 [雑誌]

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