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みんなの「小説」ブログ

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小説『彼の命』B(東京喰種に寄せて…)完
小説『彼の命』B(東京喰種に寄せて…)完 うちの運送会社には、特殊清掃部門と言うものがあった。 自殺者や、事故死など、家の中で起きた死亡者の部屋を 清掃・片付けを専門にしていて、清掃と後処理が主な仕事だった。 長い間発見されなかった遺体の痕跡、ヒトの遺体の残した 壮絶な足跡を特殊な溶剤を使用して、そこで死んだ人間など いなかった様な状態に戻し、遺体の主が残した物たちを 処分するまでが一案件の流れになっている。 島さんは以前からその特殊清掃部門に異動を請われていた。 引っ越し部門で、島さんは一目置かれ、その有能さで 特殊... ...続きを見る

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2017/03/08 20:31
小説『彼の命』A(東京喰種に寄せて…)
小説『彼の命』A(東京喰種に寄せて…) 2階建てで12棟の賃貸アパートに戻って来た時、母親が出て行った あの日のように部屋の中が冷えていて、妹は帰宅していなかった。 慌てて携帯を開くと、見慣れない市内局番の着信履歴が残っていた。 嫌な予感がして、妹の携帯に電話をかけた。 今、駅前の交番にいる、迎えに来て欲しいと言う声と入れ替わりに 年配の男の声で「お兄さんですか、妹さんがここにいます」と言われた。 交番に着くと、妹はずっと顔を俯けたまま、俺の履いた汚れたズックを 見つめた。 ...続きを見る

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2017/03/07 20:28
小説『彼の命』@(東京喰種に寄せて…)
小説『彼の命』@(東京喰種に寄せて…) 『東京喰種』読んでいる時に聞いたせいもあるだろう、 米津玄師の『Orion』と言う曲に触発されて、こう言うのも 二次創作と言うんだろうか。 グールの世界観の中には、描かれないだけで、物語の登場人物 以外のヒトと喰種の物語も日常として在ると思っていて、 例えばこう言う感じであったりもするんじゃないか、と言う 自分の想像力とか相まって、一気に書いてしまった。 ...続きを見る

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2017/03/06 20:25
創作小説『その後の住人』
  ※『記憶の住人』のその後編です。 ...続きを見る

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2012/06/10 22:02
『動じない男』
『動じない男』 ※私がBLに戻ってくるきっかけはヤマシタトモコの  「くいもの処 明楽」を読んだからに他ならない。  読まなかったら、ここまで戻ってくることはなかったと思う。  生粋のJUNE世代なので、初めて読んだ『リアルBL』に、  正に脳天撃ち抜かれた。  JUNEを貪るように読んではいたが、どこかで「耽美」が  一番好きなものではない、とも薄々気が付いていた。  そして、本当の日常の中に男子同士の恋愛物語は  描けないものなんだろうか、禁断の愛だから?  でも現実にホモセクシャルの人た... ...続きを見る

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2012/03/14 22:48
創作小説『記憶の住人』●上書き保存
●第9章:上書き保存 俺は休日だったが、カフェで弓削を待った。 顔見知りの店員に聞くと、2日ほど弓削は来ていないと言っていた。 そうであれば、今日にも弓削がカフェに現れる可能性が高い。 俺は握り締めた携帯を、鳴らそうかとも考えた。 弓削はカフェで偶然出会って休憩を共にする知人なんかじゃなかった。 そして、弓削の会社は1号店からは近いが、ここへは2駅分ほど 歩かなくてはならない距離だった。 俺は何度も弓削のベッドの中で目を覚まし、そこから出勤して、 ... ...続きを見る

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2012/02/23 23:01
創作小説『記憶の住人』●生身の記憶と覚醒
●第8章:生身の記憶と覚醒 俺を傷つけ、俺が思い出したくなかったのは秀一の顔なんだろうか。 秀一は俺に拒絶されていると分かっていて、俺の病状を知ると、 そ知らぬ顔で現れた。 俺が何も思い出さないように、いい思い出だけをいっぺんに思い出させた。 本人がその記憶の中のそれは俺だ、と言ってくれなければ記憶の すり合わせは完成しない。 もし、秀一にされたことを俺が思い出しているとしても、秀一がそれは 俺じゃないと言えば、なかったことになってしまうのだ。 俺は誰かに暴力をふるわれたかもし... ...続きを見る

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2012/02/22 22:54
創作小説『記憶の住人』●誤作動と修正
●第7章:誤作動と修正 秀一の体が塊となって俺に向かってきた時にはもう、 俺の体は洋室の床に叩きつけられていた。 尻、背中、頭の順番で俺の体は倒れたが、反動がついて 頭を床にぶつけてしまった。 痛みで体をくの字に曲げようとしたが、秀一の体がのしかかってきて 痛みは体中を駆け抜け、俺は暫く本心状態になった。 視界が白く染まり、意識が一瞬、体を離れたような感覚になる。 ふいをついて正面から向けられる体積に、俺はこれが 二度目だと言うことを思い出してしまった。 秀一が俺に暴力の波動... ...続きを見る

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2012/02/21 22:51
創作小説『記憶の住人』●混乱
●第6章:混乱 年末が近くなると、仕事は立て込んで忙しくなってきた。 昼休憩が取れない日もあって、この時間帯に弓削が 来ているかもしれないと思うと、消化不良感が湧いてきて仕方なかった。 夕方ごろにやっと一息吐けるようになっても、イレギュラーな時間帯に カフェに行ってもやはり弓削の姿はなかった。 何日も弓削の姿を見ていない気がする。 丁度、谷原と会って、弓削と喋れなかった日からなので、弓削に 俺がもう休憩の過ごし方を変えたのではないか、と勘違いされるかも しれない、と言う危惧が頭... ...続きを見る

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2012/02/20 22:47
創作小説『記憶の住人』●記憶とリアル
●第5章:記憶とリアル 弓削との関係は親密度を増していくように感じてはいたが、 どうしてもあのカフェの喫煙ブースから外へ広がってはいかなかった。 休みの日は何をしているのか聴いても、新作映画の話をしても、 弓削はよどみなく話すが、一緒に行こうとは言わなかった。 公私混同をしたくないタイプなんだろう、俺とは、洋服を購入する ショップの店員であり、自分が行きつけにしていたカフェで会って 昼休みの暇を潰せるくらいに会話が成り立つ相手、そんなとこだろう。 俺は弓削との事を誰にも話さなかっ... ...続きを見る

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2012/02/19 22:43
創作小説『記憶の住人』●秘密のともだち
●第4章:秘密のともだち 弓削とカフェで昼休憩を一緒にするのが俺の習慣に加わった。 事故前の記憶と違い、記憶のフィルムは鮮明で色濃い。 弓削は穏やかにゆっくり喋るが、その言動は頭の回転の速さを 思わせる言葉選びが多く、どんな本を読んでいるのか、とか、 大学では何を専攻していたのだろうとか、俺は弓削に興味を持つ 自分を抑えることが出来なくなっていた。 俺の性癖がそうさせるのか、これが単に好感を抱いている、 と言うことなのかは分からなかったが、カフェに弓削の姿がないと 残念に思うよ... ...続きを見る

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2012/02/18 22:40
創作小説『記憶の住人』●記憶の住人
●第3章:記憶の住人 俺の日常は一定のリズムを刻み、一見平穏に流れていく。 秘密の友人の記憶に気持ちを揺さぶられはするが、 生活は乱れなかった。 2号店の、二車線道路を挟んだ向かいにカフェがオープンし、 ランチタイムにセットメニューが出てそれが低価格で手ごろで、 あっという間に周辺のショップ店員の行きつけの店になった。 新しい場所に行くより、以前行ったことのある場所へ行き、 顔のパズルを埋める事ばかりしていた俺は、 新しくて見慣れない場所に自分の記憶が生まれる新鮮味を味わってい... ...続きを見る

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2012/02/17 22:38
創作小説『記憶の住人』●記憶の推理
●第2章:記憶の推理 2号店では顧客のいない俺は、覚えていないお客さんに困ることもなく、 仕事は順調にいっていた。 仕事の記憶はそのままそっくり残っており、勝手がわからなくなる時は、 深く他者と関わって行った職務に限っていた。 自分が能動的に行っていたものは、何も困らずに 継続して行うことが出来るようだった。 真壁が何かと気を使ってくれるので、職場環境にはあっという間になれた。 むしろ周囲が、事故の大きさを考えると、 復活の早い俺に戸惑うことはあっても。 トラックに跳ね飛ばさ... ...続きを見る

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2012/02/16 22:34
創作小説『記憶の住人』●プロローグ
●プロローグ 目に映る世界は、俺の知っている馴染みのある風景に 埋め尽くされている。 褪せたような色合いの青空も、林立する高層ビル群も、 地上を行き交う人たちもどこも変わったとこは見られない。 変わったのは俺だ。 俺の中にあったと言う、本来の俺は失くなっているのかもしれない。 一度死んで生まれ変わったみたいなものでもないのに、 俺はその失くしたように感じるものを、どうしても思い出せない。 半年前に事故に遭い、映画や物語の主人公のように、 俺は記憶の一部を失った。 過去の出来... ...続きを見る

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2012/02/14 22:25
皆既月食の夜空の下、こんなメンズカップルがいたら…(妄想アワー)
昨夜の皆既月食後、妄想がふつふつと…(笑) ...続きを見る

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2011/12/12 00:45
『公私混同禁止領域』後篇
藤井から店に電話があったのは翌々日だった。 一居は接客中で、店主が応対に出た。 この店は元々無類の靴好きの店主が趣味で始めたような店だ。 「クレームですか」 「いやいや、明日君が出勤しているか、という事だったが、定休日だ」 「定休日ですね」 「もう一足、オーダーを頼みたいと言う事だったよ」 「もう一足?一足目もまだできてないのに」 「プライベート用のものを作っておきたいと言っていた。  できるの一ヶ月かかるので、今申し込んでおきたいそうだよ、せっかちだね」 変な客だ、という、... ...続きを見る

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2011/07/28 18:40
『公私混同禁止領域』中篇
会社の上司に連れてこられた30代になったばかりと思われる客は、 藤井と名乗った。 連れて来たのは商社の重役で、顧客リストに名を連ねている堺だった。 堺は、昇進した部下に「自分仕様の上等な靴を履け」と言って、 毎回昇進祝い代わりに部下を連れてくる。 堺の足は偏平足で、長時間歩くに耐えない足で、若い時に営業回りで 足首を痛めた時に、オーダーメイドで歩きやすい靴を作った方がいい、 と整形外科医に勧められてからの上顧客だ。 上顧客だったが、一居は好みの足ではない堺には、それほど親しみを ... ...続きを見る

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2011/07/27 18:35
『公私混同禁止領域』前篇
靴下の上からでも、その人の足の形状が分かる。 持って生まれた能力なのか、好きが高じてこんな能力が備わったのか、 逡巡するにはあまりにも自分のアイデンティティーと密接に結びついてるので、 一居(いちい)は考えるのをやめた。 オーダーメイドの靴屋の店員になって、自分にとって最適な職場環境に 身を置くことになった時から、理屈をこねくり回すのはやめたのだ。 これは自分が選んだ道で、ここに来るべく動いたのは自分でしかなかった。 他者の足の形状に只ならぬ執着を持つ自分の性癖は、表に出せないので... ...続きを見る

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2011/07/26 18:31
『暁の混合種』Chapter:23(完)
マシューズは1週間、混沌とした精神世界を彷徨い、衰弱し、死んだ。 徐々に緩慢になっていく口から、カジンスキーとの思い出話がこぼれ、 掠れた声で笑い、大きく息を吐き、喋らなくなった。 「好きだったぞ、お前のことが」 「俺には大事な相棒だ」 「好きの意味を考えてくれよな」 「わかってる、ずっと考えてた」 「そうだな、だからお前は妹を引き取ったんだったな」 そう言って、満足そうに口を閉じた。 「おれは外にいる。  心臓の音を聴いてやれ」 ルカは小屋の中に二人の男を残し出て行った。... ...続きを見る

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2011/06/05 22:26
『暁の混合種』Chapter:22
セリアの容貌はカジンスキーとあまり似たところがなかった。 どちらもが片親にだけ似た兄妹のようだった。 マシューズの後ろから出てきたセリアは、憔悴し疲れきり、絶望しきっていた。 現実世界から逃れたい一心で、セリア自らが吸血種の存在を求め、 辿り着き、選択した結果だったが、彼女の望み違った。 ペアリングパートナーに飢える若輩者の吸血種の甘言に騙され、 自身の体が作り変わった後に、後悔の念が押し寄せて、耐え切れず、 混乱し、出奔に気付いたマシューズを巻き込んで逃亡した。 セリアの顔に表... ...続きを見る

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2011/06/04 22:13
『暁の混合種』Chapter:21
混合種の誕生は今に始まったことではない。 昔から特異な事例として存在していた。 混合種が畏怖の対象になったのは、混合種が親である吸血種に対し 親殺しという冷徹な部分を持ち合わせているからだ。 生まれた混合種は、なぜかそれが宿命付けられているかのように、 その精神構造は人間に近い特徴を見せることが多い。 そもそも吸血種は人間を「食欲を満たす対象」としての認識が強く、 懸想したり感情移入することは皆無と言っていい。 その為、自分を吸血の対象としての範疇に入れているだろう、 吸血種の... ...続きを見る

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2011/06/03 22:06
『暁の混合種』Chapter:20
カジンスキーの車が止まりきらないうちに、川沿いの小屋の一つから 数人の男が一度に外へ出てきた。 ゆったりとした動作を装っているが、出てきたのは大柄な男ばかりで、 それだけで立ち入り禁止区域に侵入したことを諌めに出てきたように見えた。 正確には4人の男たちだった。 カジンスキーは来た道を戻りやすい角度に車を停めた。 「やあ」 車から降りるのを待っていたかのように男の1人が声をかけながら更に近付いてきた。 平たい顔に、鷲鼻で、顎髭をふんだんに蓄えた黒髪に大男だった。 ゴシックホラー... ...続きを見る

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2011/06/02 22:25
『暁の混合種』Chapter:19
翌朝、1ブロック先の簡易食堂でカジンスキーは一人前の朝食を摂った。 ルカは殆ど口をつけなかったが紅茶を頼み、煙草をふかしていた。 朝食後、すぐに出発する二人をサムとその祖父が見送った。 彼らのなにがこの行きずりの男二人組に思い入れを持たせたのかは 分からないが、祖父はルカとの別れをかなり惜しんでいるように 手を握り、撫でさすり、ようやく離した。 街道まで見送りに出ていた二人が見えなくなって暫くして、 ぼそりとルカが言った。 「おれとあんたがカップルだと思ってたみたいだ」 「カッ... ...続きを見る

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2011/06/01 23:20
『暁の混合種』Chapter:18
「いつもは、人目のつかない場所に潜り込んで寝るんだ。  3日ほど寝ていれば、勝手に復活する」 言い訳するようにルカは言った。 「寝るんじゃなく、意識不明になるんだろ」 「意識はちゃんとしている、身体が動かせないだけだ」 見た目が意識不明なら意識不明だろ、と言い返しそうになったが、 元々自分の車のせいだったのを思い出してやめた。 何か言いかけて口をつぐんだカジンスキーの気配が伝わったのか、 ルカはぶっきら棒に礼を言った。 「あんたの予定が狂ってしまった」 「そんなものはいいんだ... ...続きを見る

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2011/03/03 13:48
『暁の混合種』Chapter:17
ルカを運ぶのを手伝い、42度の適温のお湯を入れたペットボトルを 数回入れ替えに来てくれたモーテルの若者は、ここの持ち主の孫だった。 脳卒中で車椅子生活になり、モーテルの経営を孫に託した祖父に、 客に救急の事態が起こった時に初期対応ができるようにしておけ と言われ、救命士の資格を取った。 役立つ頻度は低いが、少なくともカジンスキーにとっては心強い 的確な対応だった。 寝ない・食べないでも平気そうだったルカが、 こうやって意識を手放す様に心底困惑していたからだ。 ルカの体温は、あっ... ...続きを見る

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2011/03/02 23:12
『暁の混合種』Chapter:16
数キロ先のガソリンスタンドの年老いた店主のトラックに乗って、ルカは戻って来た。 店主はしっかりと雨合羽をはおり、雨の中をゆっくりした足取りでカジンスキーの 車へ近付いてきた。 「ボンネットあけてくれ、バッテリーを繋いでやるよ」 作業を済ませると店主は自分のトラックへ、ルカはカジンスキーの車の 助手席に座った。 「寒くないのか」 「ちょっと寒い」 ルカがいない間に、汚れてはいるが乾いたタオルと携帯用の毛布を 探しだして、後部座席に積んでいたものをルカに差し出した。 タオルで髪を... ...続きを見る

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2011/03/01 01:06
『暁の混合種』Chapter:15
車は、カジンスキーの重たい気持ちと、ルカのやりきれなさを 読み取ったかのように、突然停止した。 ボンネットを開けに行ったカジンスキーは、バッテリーが上がった、 と言って、予備のバッテリーを探しに後ろのボンネットに回ってから 浮かない顔をして運転席に戻って来た。 契約している整備会社に電話をかけようとしたが、携帯の電波が届いていない。 丘陵地帯まで広がる平原のど真ん中で、立ち往生とあいなった。 「困った」 「おれの携帯も駄目だ」 「困ったな、半日で着くと言ってたよな」 「車が動... ...続きを見る

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2010/12/21 23:22
『暁の混合種』Chapter:14
朝の光に、ルカの顔の産毛が透けて見える。 どこから見ても、彼は普通の端正な顔をした若い男にしか見えない。 1世紀以上を生きているルカの母親がすでにこの世にいない事は分かる、 では、吸血種に父親はシドと同じように、人間との間に子供をもうけた後、 吸血しない生き方を選んだのだろうか。 すぐに街を抜けて、平原を突っ切る幹線道路に出た。 ジョナサン率いる吸血種グループが今いるであろう丘陵地帯まで、 この道をひたすら走る。 その間は小さな村落が点在しているだけだ。 車を走らせるだけが目的... ...続きを見る

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2010/12/20 23:56
『暁の混合種』Chapter:13
シドが作ったランチのサンドイッチを持って出発しようとした時、 子供部屋から鼻にそばかすを散らした金髪の少女が足音を立てながら 走ってきて、ルカの足にダイブした。 ルカは腰をかがめ、シドの娘のルーシーを柔らかく抱きしめ、 髪を一撫でして立ち上がった。 二人は全く言葉を交わさなかったが、より深い所で結ばれていると 感じさせる情感を交わし合っているように見えた。 カジンスキーがドアを開けた時、シドがルカに何かを手渡すのが見えた。 見とがめられたシドは、一端渡したものをルカの掌から取り返... ...続きを見る

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2010/12/18 23:35
『暁の混合種』chapter:12
おごそかに食事が終わると、ルカはキッチンのシンクですぐさま歯を磨いた。 腔中にいつまでも食べたものの感触が残っているのが生理的に受け付けない。 味の名残を、否応なしに突きつけられるの感触が嫌いだった。 歯を磨いたら、今度は煙草を立て続けに吸う。 磨いたばかりの舌の上に、ニコチンの刺激を与えて相殺させる。 ルカにとって食事は、罪悪感の伴う面倒な欲求でしかなかった。 恐らくそう感じるように、母親によって擦り込まれたのには違いないが、 今更それを払拭しようとか、克服しようとは考えなかった... ...続きを見る

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2010/12/17 01:15
『暁の混合種』Chapter:11
二人が座っていたソファーを伸ばしてベッドにし、奥の部屋から 一組の毛布と枕を持ってシドは戻ってきた。 ルカはそのシドのあとについて行き、ルーシーの部屋にそっと入り、 柔らかい金髪に包まれた寝顔だけを見て戻ってきた。 ここ数年、ずっとルーシーは5歳くらいの小さな女の子の姿だ。 「遠慮せず、寝てくれよな」 「ルカ、お前は…」 そこまで言ってから、ルカが寝ないでも済む人間だと言うことを思い出した。 シドはどうやら信用の置ける人物と言う気がしたので、カジンスキーは 素直に床に着いた。 ... ...続きを見る

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2010/12/16 01:28
『暁の混合種』Chapter:10
シドはカジンスキーの話を聞いてから、自分の身の上を淡々と 話して聞かせた。 シドはいつからか自分でも覚えてないほどの昔から吸血種だった。 吸血種らしく、吸血種として、人間を獲物に、吸血をして生きていた。 他の吸血種と違う所は、近代に入って、人間の想像する文化の一翼に 強く興味を持ち、惹かれ、好んで吸収するようになったところだ。 映画と、音楽、シドは魅了され、映画館で働いていた人間の女と 親しくなった。 彼女と、映画と音楽を享受し、会話し、愛し合った。 シドの、人間の文化への傾倒... ...続きを見る

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2010/12/15 23:56
『暁の混合種』Chapter:9
情報屋の住まいに着いたのは真夜中を丁度回った頃だった。 県境に近い中都市で、駅前のロータリーを抜けると すでに街の通り眠りに就いているようで閑散としている。 車中、食事を終えて人心地ついたカジンスキーは、何かとルカに 話しかけたのだが、殆ど生返事で要領を得ない応対しかして貰えなかった。 物思いに耽っているでもなく、カジンスキーと話したくないわけでもない。 ルカはずっと助手席で首を窓側に傾け、車窓の風景を、 流れ去り記憶にも残らない一瞬の映像をいつまでもいつまでも眺めていた。 「仕... ...続きを見る

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2010/12/14 00:46
『暁の混合種』Chapter:8
ウエイトレスが来るまでの数分間、妙な間が空いたが、全体的に 茶色の色味の食材がこれみよがしに皿に盛られたセットメニューの 油や食材の匂いがその沈黙に水を差した。 カジンスキーは飢餓地帯から帰還した子供のようにガツガツと食べた。 ルカはいつもの通りに、ボディバックからピルケースを取り出し、 鉄分の錠剤を水で流しこんで食事は終了した。 オーダーを運んできたウエイトレスが遠巻きに二人の様子を伺っている。 兄弟には見えない、かと言って職場の同僚にも見えない男二人が 3組ほどの客しかいない... ...続きを見る

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2010/12/13 01:02
『暁の混合種』Chapter:7
気が散りそうになったので、今一度カジンスキーの掌の 浮き出た静脈に目をやった。 「吸血種とお前は言ったな」 「言った」 「吸血鬼とは呼ばないのか」 「あれはお話の中の怪物の呼び名だ」 ウィンカーを点滅させ、カジンスキーは車を道路脇に寄せ、停車させた。 ルカの物言いが気に入らないので、腰を据えてきちんと会話するよう、 説教でもしたいのかもしれなかった。 「何が違う」 サイドブレーキを引き、カジンスキーは埃まみれのフロントガラスを 見据えたまま言った。 「定義は同じだろうが、... ...続きを見る

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2010/12/11 23:10
『暁の混合種』Chapter:6
カジンスキーの両親は、カジンスキーが10歳の頃、生後間もない妹と彼を 父親の姉夫婦に預けて、育児疲れのリフレッシュとクリスマス祝にとオペラ鑑賞に 夫婦で出かけ、その帰りに強盗と遭遇し、銃撃され殺された。 一夜にして両親を失った彼は、年齢を考えて、施設ではなく、 父の姉の家に養子として貰われ、生後間もない乳幼児の妹は 父の姉に持病があり、乳幼児と10歳の男児を一度に迎え入れ 育てるのには無理があると裁判所が判断したことを受けて、 妹はケースワーカーの手に託された。 自身の身の振り方... ...続きを見る

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2010/12/10 23:22
『暁の混合種』Chapter:5
男が起きたのは正午を過ぎ、ルカが住まいにしていたアパートに一旦戻り、 ボディバック一つに荷物をまとめ、鍵と、来週分に少し色をつけた家賃を置き、 何処へでも出ていける成りで戻ってきて、ドアを開けて部屋に入った時だった。 ドアが閉まる音で目覚めたカジンスキーは、一瞬で覚醒した直後、 自分の右手にぶら下がる手錠の感触に警戒心を露わにした。 「どこへ行ってたんだ、いや、それよりも何だこれは」 「手錠抜けは得意なんだよ、言わなくて悪かったな」 まだ、ルカの特異な体質については知らせないつもり... ...続きを見る

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2010/12/09 23:23
『暁の混合種』Chapter:4
電話の相手は1コールで出た。 ルカがかけてくるのを待ち構えていたようだ。 開口一番、どうなった、と聞いてきた。 「やっぱりお前か」 相手はルカの弟のシモンだ。 ルカ誕生の3年後に生を受けたもう一人の混合種だ。 シモンはほぼ完全に世間というものから隔絶して生きている。 居所をルカは知っているが、滅多に直接会う事はない。 外見の変化が乏しい兄弟なので、10年ほど会わなくてもさほど距離は感じない。 「ちょっと、待って」 ルカは一端電話を切り、携帯を尻ポケットにしまった。 完全に眠... ...続きを見る

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2010/12/08 23:22
『暁の混合種』Chapter:3
あっさりと青年が車に乗ってきて、本当の所、男は面喰っていた。 職業柄、表情には出なかったが、青年は見透かしているんだろうと思っていた。 ショルダーホルターに収めた銃も、何の役にも立たないし、男が得た情報が 真実であれば、この世の誰にもこの青年を殺すことは難しい。 そして、この青年がその気になれば、恐らく、悲鳴さえ上げさせず 命を奪うことができる筈だ。 青年は男に見つけて欲しくはなかっただろうが、見つかったとしても 決して恐れてはいないのだ。 気がつけば、青年は煙草を一本、ゆっくり... ...続きを見る

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2010/12/07 23:05
『暁の混合種』Chapter:2
身をひそめる彼を見つけるのは至難の業だ。 これを成し遂げたものは未だかつて数えるほどしか存在しない。 そして彼を求める理由は、どちらかしかない。 彼を欲し、讃えるものと、彼の力を利用しようとするもの。 無精ひげの男は明らかに後者だった。 後者のものには、彼に食らいつき放さない確固たる動機を持った者が多い。 それは復讐心が招くもので、この精神状態は成就しないと消化されない。 職業柄、この男の執拗さを甘く見ることはできない。 ルカと言う名の秀麗な青年は、逃げるほどに追い駆けられるだろ... ...続きを見る

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2010/12/05 00:21
『暁の混合種』Chapter:1
夜がざわめいている。 惨たらしい人間のなれの果てを包括して。 男は沈黙し、内面に怒りを飼い、夜の中を進み始めた。 噴怒を先導する者を求めて。 人知の及ばぬ世界を踏み抜き、彼も獣の嗅覚を手に入れた。 彼は探し当て、薄汚い現世の扉に手をかけた。 ...続きを見る

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2010/12/04 00:07
完結できるか不安だが…
すっかりTwitterの魅力のとりつかれて、こっちが疎かになりがち… 140文字でその瞬間に感じた事を書き込めると言うのは、 実に魅力的である事は間違いない。 やっぱり、ブログはなんだかんだ言って、読んでくれる人が居ないとしても 構えて書いている。 ワード検索で辿りつかれた場合に、数年前の記事がそのまま見知らぬ 誰かに読まれる訳で、膨大な窓口が開いているからだ。 その点Twitterは、フォローし合っている人間同士にしか読まれない 可能性の方が高く、フォローし合っているくらいだか... ...続きを見る

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2010/12/03 00:01

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