魅力的な主人公を配する北欧系警察小説『特捜部Q-織の中の女-』②

アメリカの海外ドラマやハリウッドの刑事物を 見過ぎていると、設定はよくある「トラウマを追いつつも 刑事としての職務を全うしようと一人果敢に闘う男」と言う ハードボイルドテイストの一匹狼風主人公がすぐに 思い浮かぶのだが、そんな彼らとカールは明らかに 違っている。 自分はおかしい訳じゃないから心理療法は受けたくない、 と言いつつ、心の傷を自覚してそっと医師の元を訪れる 訳ではなく、単に担当医師がすこぶるそそられる好みの 女性だったので、なんとかお近づきになれんものか、と言う カールの動機は「自分の心への忠実さ」とは程遠い(笑) かと言って無類の女好きで誰彼構わず口説くでもなく、 単に「女性」は恋愛関係を結ぶ相手として常に素直な 興味を持っている普通の男性で、女性に手が早いのが 男を上げる一端である、と言う女好きとは一線を引いている。 好みの女性にはなんとか近づきになりたいと思っているが 苦手な女性にはなるべく関わらないようにしたい、 と言う具合に女ならとりあえず声をかけると言う「タラシ」とは 明らかに違っている、が女性が好きな事は間違いない(笑) アメリカのドラマに顕著に見られるのが「自分の弱さを 自覚する事が強さである」と主張する場面が「心を 揺さぶられる場面」「トラウマを克服する瞬間」として 描かれている場合だ。 誰かに諭されたり、乗り越えた人の姿を見て決心したり、 そこへの導入には「自分一人の決断」と言うよりは その人間の事を案じる誰かの導…

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魅力的な主人公を配する北欧系警察小説『特捜部Q-織の中の女-』①

北欧ミステリにハマっている… 前々から気になっていて、フォロワーさんからアーナルデュル・ インドリダソン『湿地』『緑衣の女』を譲って貰って読んでから、 欧米文学と同じように「海外文学」には違いないのだが、 独特の風景が醸し出す「陰鬱さ」「硬質さ」と言うものに 惹かれる様になった。 日本の歴史も把握してないような歴史音痴なので 北欧の背景や土地勘など全くないにも関わらず、 (北ヨーロッパと言う事は比較的寒い地方、  と言う幼稚な印象しか持ち得てない、恥ずかしながら) 殺人事件と言う、人が人を殺す怖さをシステマティックに 処理するのではなく、事件を解決に当たる職業人側が 「事件を解決する仕事」に真摯に取り組んでいる 真面目さは、日本人の真面目さに通じるものを感じるな、 と言う印象が残っていた。 自分にはこの仕事しかないんだ、天職なんだ、と言う 情熱を熱心さの目安にするのではなく、殆どの庶民が したい事であろうとなかろうと生きて行く為の収入を得る為に 仕事である限りはきちんとやるのが当たり前、と思って 律儀に仕事をしている感じ、と言うか。 加え人が持つ業の深さを殊更感情に任せて煽るのではない 描き方が特徴なのかな、くらいな認識でしかないが、 明らかにヤンキー文学とは違って、その土地に住む 人の行いは「地に根ざして」いて、全ての行いは 個人主義が生む個人主義が日本より色濃いながらも 根っこの所で土壌が生む歴史の積み重ねから 離れてはいられないんだな、と言…

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