彼らのその後が未だに気になる「感情サイン」「言葉より強く」。

Twitter絡みで始めた「ザ・インタビューズ」もとても面白いツールだ。
昨日、どこの誰かは分からないけれど
「日高ショーコ作品で、一番好きなキャラクターは誰ですか?」と言う
ご質問を受けたのですが、これが意外と即決で思い浮かんだ。

私の中では王道の中の王道なので、実に難しい・・・と思いきや、
実はそうでもなかったりするご質問だった。
「嵐のあと」が、恐らく生涯一、好きなBLコミックス1位と言う不動の地位に君臨し続けると
思われるのですが、日高作品で好きなキャラはここからではなく、
「言葉より強く」「感情サイン」渋谷三上なんだなぁ・・・
いつか、この二人が成長して、社会人になってからの作品を描いてくれないか、
と未だに切望し続けている。

この二人のライバル関係は、どちらが上位の成績を取るのか、と言うこだわりを
三上が持っていることで、純粋に相手を「好きだ」と言い放てない、
天邪鬼さが初々しく、生々しく、この二人が同じ大学に進学するか、
はたまた違う大学に進み、接点が切れて終わってしまうのか、と言う
幾らでも妄想逞しく出来る要素がある、と言う面でも未だに忘れられない作品の一つ。
恋愛感情と学生の本分らしくどちらが頭が良いのか、と言うライバル的な要素が複雑に絡み合って、
一筋縄ではいかない状況の真っ只中であるのが、何とも言えず危うい魅力で
迫ってくる。

実は私は学生もの、とか学校が舞台のBLはあまり好きじゃないんだなぁ。
それはもう、何を読んでも一緒にしか見えないほどに。
学生ものほど、パターンを踏襲し、個性の出しにくい題材はないと思う。
私が学生ものが苦手なのは、「またこのパターンか」と思うのが嫌だから、
生徒×生徒、先生×生徒、生徒×先生、って文字を見ると拒否ってしまう…(笑)
・生徒会役員がみんな男前で、学校の中で傍若無人に自分たちのルールで
 学生生活をコントロールしているパターン
⇒そこで可愛い顔の新入生が入ってきて・・・云々かんぬん
・クラスの優等生が実は買春していて、それを知ってしまった俺は・・・云々かんぬん
・幼馴染のあいつの方がクラスの女子より可愛いと思ってしまう俺は・・・云々かんぬん
・クラスの鼻つまみ者のヤンキーが実はとても優しくて、優等生の僕は・・・云々かんぬん

思春期は「苦悩」に満ちている筈なのだ。
希望よりも、苦悩がこの世界を支配しているんじゃ・・・と思い込んでしまうくらいに。
思春期真っ只中の人間が、こんなに世の中割り切れたり、あっけらかんと出来るもんか?!
と言う、自分の思春期と照らし合わせた際に、現実味に欠ける、と思ってしまったら
所詮ファンタジーかよ、と思ってしまう、BLなだけに。

日高作品に学生ものを描いているのはこれだけだと思いますが、やはりこの作家さんは
何が違うかと言うと、突飛な嘘は吐かないが、現実そのものか、と言えば無論そうじゃない、
その間の所を上手く描いてくれて、それが暑苦しくない。
漫画的に「リアル」。
そこがどの作品にもブレなく備わっている・・・
リアリティを追求して、説得力を、とか考えてらっしゃらないと思う。

上位成績を争うライバル同士な二人が、何ゆえに性的な関係を結ぶに至ったか、
そこをくどくど描いてないところが特に好きだ。
そんなものは、成績を争いあう仲になった時点で、誰よりも互いを意識するはずだから、
意識しあった時点で、他の人間よりは違う認識をしているわけだ。
ライバルは総じて、自分にないものを持っている場合が多く、それを妬む反面、
うらやんでいる、と言うのは思春期独特の「表裏一体」的な精神状態そのものだ。
10代と言う、何も定まってないひとときに、相反するものを抱えまくるのは
自然なことで、誰もが通ってくる道筋だ。
間違いなく渋谷の方が、ライバル心は相手を蹴落としたり憎んだりするだけじゃない感情だ、
と先に気付いていたはずだ、だから三上にちょっかいを出した。
三上はひたすらに渋谷に負けまい、と言う気持ちが勝っていただろうが、
ライバル=嫌いな人間、となるわけではない、と言うことはどういうことだ、位の
ラインで立ち止まっていたのを、渋谷が「気付いてしまえ」と誘い水を出した。
自分の渋谷への感情が「敵対心」だけではない、と薄々気付いていた三上は
痛いところを突かれて、最初は弱みを握られたような気分で渋谷との肉体的接触を
受け入れてしまったのだろう。

親友だけど、親友だからこそなんか憎らしい、と思う気持ちは、実に子供っぽい、
稚拙な感情かもしれないが、これこそが「擬似恋愛」のなんたるか、だと思うんですよ。
その稚拙な、でも濁りのない気持ちを持っている二人をサラッと描いてあるので、
この二人は忘れられない二人です。

擬似恋愛というやつは厄介だ、それが「気の迷いだよ」と言われない限り解決しない。
恋愛感情を持つのに障壁のない異性が相手の場合は「擬似恋愛」ではない。
擬似恋愛は、異性に抱く恋愛感情を、それ以外の人間に抱くことで、本来の恋愛の為の
予習をしている好意、と言われるが、それが予習でなく実地になる場合があるのだ。
それが同性に対する擬似恋愛だと思う。
異性に対する準備段階なのか、実は自分は同性に対して恋愛感情を抱いてしまう性癖なのか、
この間で判断に迷うからだ。
この迷いの部分を、三上よりは精神面では自分を自覚すると言う分野で上だった渋谷が
上手につけ込んだんだと思われる。

そう言う面で、ずっと渋谷の方が三上よりちょっと大人なんだろうなぁ。
この大人な部分の力関係はずっとこのままの図式なのか、逆転するときが来るのか・・・
なんて考え出すと、この二人のその後が読みたくてたまらなくなるので、
どうしても勝手な妄想をしてしまう(笑)

果たして、渋谷と三上は同じ大学に進んだりするだろうか。
同じ大学に進むとしても、同じ学部とは思えない。
同じ大学に進みながら、付き合う友達の種類が違うだろうから、
学内で見かけても「声を掛けない」関係になってしまいそうだ。
三上の方が「大学では話しかけるな」とか言いそうだし。
で、高校時代の延長のように隠れて付き合う秘密の友達になるか、
三上がかなり拒否って、今度はきちんと自覚して、渋谷の方が「恋愛関係」として
強引に三上に迫っていくか・・・はたまた・・・

もし、違う大学に進学したら、一度接点はここでぷっつり切れるような気がする。
切れてしまって、社会人になって数年後に、ひょんなことから再会、か。
その場合は、渋谷は結構、普通に女子にモテて、長続きしない関係を食い散らかし、
心の奥でずっと三上を想っていそうだ。
かと言って、強引に追いかけるような真似はしないだろう。
弱みにつけ込むのはいけない、と言うことを理解している大人になっているからだ。
三上は逆に、大学時代も社会人になってからも、同性と関係を持つような経験をして、
ぶっきら棒ぶりに拍車かかってそうだ。
別にゲイを自覚したわけではなく、女子とも付き合ったりするが、いつも受身で
自分から「付き合おう」なんて言ったりはしないだろう。
自分は「非恋愛体質だ」と思い込んで、自分のやりたいことだけしている気がする。
社会人というより、大学に残って研究職とかに就いているかも。

日高作品にはいわゆる「キャラ立ち」しているような、強烈な個性の持ち主は出てこない。
一般社会で通用するような人物形成の範囲内で描かれている。
それが「個性がない」と言うことになるのではなく、個性的であろうと個性的でなかろうと
1人の人間が生きているとしたら、感情が揺さぶられる瞬間にはいい言葉が口から出てしまったり
決断力を要求されるような大胆な行動にも出るだろう、と言うこと。
面白い人物が面白い事を言って、それがツボに入ることもある、だけど、
いい意味で「普通である」生活の中に、どれだけドラマが隠されているか、
日常があるから、非日常なことも起きる、と言うこと、そんなドラマ性に満ちた瞬間を
過剰にではなく見たまんま描いているのが日高作品だと思う。

その作品群の中で、これからこの二人がどうやって行くのか、
と言う余韻が非常に濃厚なので、渋谷と三上の10代男子が好きだ。
もう、先に「男の顔」が見える、この二人は。
それが、学生もの苦手なはずの私の記憶にずっと残ってる。
日高作品の登場人物は「その先の顔」が見えてくる、と言う面でも共通項がある。
5年後、10年後が見えそうな気がしてくる。
それは、身近にいる人間の年の取り方を、当事者としてではなく客観的に知ってしまう、
そんな感じに非常に似ている気がする。
その人と自分はそんなに仲良しでもないし、仲良くもなれなかったけど、
今何をしているかな、と言う噂が耳に入るくらいは知っている、と言う関係。
そんな風に彼らのその後が知りたいと思う。

渋谷は、攻めとしての将来性が非常に高い男の子、懐が大きくなっていく気がする。
三上は、あの通り色々ややこしそうな部分を持っているが、それは繊細さの
裏返しなんで、可愛がり倒したくなる受けに成長しそうだ(笑)

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