矢代がそこにいた…『囀る鳥は羽ばたかない』③

大人になってからも影山との縁を
切ろうとしなかったのは、八代は概ね男前な
性格なのだがそれでも初恋の未練
なんだろうなぁ。
矢代と影山の高校時代の関係性はやはり
「秘密の友達」の部類に入ると思う。
表だって大っぴらにつるむのは影山の
マイナス要素になるので避けてはいるが、
二人には二人にしか理解し難い時間を
分かち合っている、と言う…
影山が嫌がれば、矢代は自分からは
近付かないし、影山の歪みを逆手に
取って脅迫まがいの行動を起こす気も
さらさらない。
矢代の傷の本当の意味を考えない
影山の世界を壊したくないという
矢代の優しさが痛い…


モノローグではずりネタにする為に
(矢代は精神的には限りなくS側)
影山の父のお葬式に行ったのでは
ないだろう。
矢代自身気付いてないけど、やっぱり
影山が父を亡くして悲しんでいる
だろうから傍にいたいと言う矢代の至って
ノーマルな感情面の方が先走ったのを、
自分の性癖と言うものにすり替えて
誤魔化して、自分の内面の真っ当で
きれいな部分に目を瞑ろうとした様に
思えてならない。

肉体とは違って影山への純粋な自分の
気持ちに気付かないように、本能的に
幾重にも予防線を張っているように見えて
痛々しくてしょうがない。
想像の中での影山はタチでもネコでも
なかった、ってモノローグが証明してる
気がする。
影山の気持ちは性的にどうこうと言う
具体的な性愛とは程遠い所にある、
純粋な感情なんだろう…

コミックス読んでた時はそこまで
気付いていなかったのだ…
矢代は奥が深い…
あんなに虐げられてる過去がありながら
精神的にS側である、なんて、相当な精神力だ。
自分の強さの裏側に「感情」があったと
『漂えど沈まず、されど鳴きもせず』
人間は両面を持ち合わせて一個になり、
どんな面も気付いていないのではなく
無意識に押しこめざるを得なかったり
知りたくないと目を瞑っていたりするのだ。

影山は矢代の自分への執着に
気付いているんだろうか。
学生~大人の間で一区切り着いた様に
振舞ってるけど、やっぱこのお話は
矢代と影山の話なんだな、って気がする。
吹っ切れたかもしれないのに、影山が
久我と恋仲になっていくのを見て、
矢代の諦めはどこまで行ったのだろう。
影山のフェチズムの最たるものが
火傷の痕で、それを知った上で
自分の傷を触らせてくれた矢代の存在は
影山の中にも大きく残っている筈だ。
火傷フェチの種類の中でも煙草の痕が
一番興奮するんであろう影山は、
矢代の気持ちに気付かないように、
その痕が残ってしまう行為が行われる
怖さを、実はよく解ってないのかも
しれない。
そう考えると、影山の方が遙かに
歪みが大きい。
ひょっとしたら、矢代は影山にはその
歪みに気付いて欲しくないとずっと
願っているんじゃないだろうか。
自分と同じ様に歪みに晒されたら
影山の本質が消えてなくなるのを
恐れているんじゃないだろうか。

読み始めた時は、これはBLとして
如何に百目鬼が不能を告白し、
自分に心からの愛情を注ぐ同性に
抱かれた時に喜びを感じるか、
肉体を苛むだけのものではないと
言う事を知るか、と言う部分を
期待して読めばいいのか…と言う
くらいの出歯亀っぽい下心があって
読んでいた部分もあった。
これはBL作品だから。
が、しかし…今は、百目鬼はかなり
頑張らないと矢代は好きには
なってくれないよ、と思えてきた。
百目鬼では恐らく、影山の代わりにも
なれないんじゃないだろうか。
矢代は今も影山が好きだ。
それでも矢代が百目鬼の気持ちを
知りつつ傍にいるのを許しているのは、
性的なものに否応なく晒される事に
因って中毒になってしまった矢代と、
暴力的な性欲を見てしまう事で自分の
性能力を封じてしまった百目鬼の心が
表裏一体に感じたからじゃないだろうか。
同じ様で似ていないその様。
矢代は百目鬼をまっとうな世界に
返したい、とずっと思っている気がする。
(これは2巻目に登場する矢代が
 襲撃された場面で物凄く伝わって
 来るのだが、2巻発売前なので
 ネタばれ防止でここまでにい留める)

聴いている内に、矢代の業と言うか
複雑さが身に染みてきて、矢代と言う
一人の人間がどんどん厚みを増して
この人好きだなー、と言う気持ちに
なってくる。
大の男が寄ってたかって食いついても
びくともしないしなやかで強靭な肉体を
持つ矢代はやはりキング・オブ・びっち
の称号が相応しい
山藍紫姫子『堕天使の島』のクリスと
並んで。
寂しいような悲しいようなBGMのピアノの
音が良く合っている。
自分の境遇を可哀想と思わない精神力が
無いと「びっち」とは呼べないのだ。
矢代の事を組員が噂してる中で
「お上品な面」
って言ってた下り、すごく好きだ。
「女みたいな綺麗な顔」とか「美人」とか
言わずに「お上品な面」と言う表現を
選択してる所、虚構の中のリアルを
追及している作者がいる気がする。

褒めちぎっているわけではないが、
全くノーマークだった新垣さんの
矢代の事を、私の大好物のあんげんの
事より書きまくっていると言う事は…
と言うことである(笑)

BLCDがどういう基準で原作を選び、
作品化されるのか、業界内の内情は
全く知らないが、一作目がある程度
売れないと二作目が作られないのだと
したら、原作好きでキャストに特に
こだわりのない人はみんな買って欲しい。
新垣さんの矢代を聴くだけで価値がある、
しかもBL作品中ではとても鮮度の
高い人がやっておられる…
これは聴いて欲しい。
どんな声優さんも、鮮度を保つのは
絶対的に難しい。
初めての出演は一度しかないし、
ハマり役にハマるのも確率で
言うとそんなに高くない。
BLスキルが高くても、同じ様な
役ばかりを聴かされると飽きる。
どんなに上手に演じられてもだ。
新垣さんの初メインで、矢代と言う
決して簡単ではない役を気負いなく
演じられている稀有な瞬間に
立ち会えると思って買って欲しいなぁ。
    (続く…
      ※敬称略

ドラマCD(囀る鳥は羽ばたかない)
フロンティアワークス
2013-10-23
(アニメCD)

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ドラマCD(囀る鳥は羽ばたかない) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



囀る鳥は羽ばたかない 1 (H&C Comics ihr HertZシリーズ 129)
大洋図書
2013-01-30
ヨネダ コウ

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 囀る鳥は羽ばたかない 1 (H&C Comics  ihr HertZシリーズ 129) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



囀る鳥は羽ばたかない 2 (H&C Comics ihr HertZシリーズ)
大洋図書
2013-11-01
ヨネダ コウ

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 囀る鳥は羽ばたかない 2 (H&C Comics  ihr HertZシリーズ) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


この記事へのコメント