矢代がそこにいた…『囀る鳥は羽ばたかない』②

矢代の新垣さんはBLで滅多と聴かない人の声、
どんな演技されるかも全く知らない、つまり
聴き手の私に予備知識がなく、それが逆に
固定観念を全く持たずに聴けた、と言う部分で
あまりない状況が最高の結果をもたらす、
と言う代物だったんじゃなかろうか。
あまりにも普通に濡れ場の艶声に演じている
感じがなさ過ぎて、ナチュラルに上手過ぎて
お上手なんじゃなかろうか…と言う事にも
気付かなかったくらいだった。
口を半開きにした状態で声が鼻からと
口からと抜けている、と言う声の出し方

素晴らしかった。
百目鬼と喋る時、高校時代に影山と喋る時、
組の部下と喋る時、百目鬼の妹と喋る時、
全部微妙に喋り方を変えていて、人間が
普通に人と喋る時にそうしているように
物凄く自然に聴こえ過ぎてしまって、
2回目に聴いた時にこれは凄い技術だぞ、
と思った次第で。

高校時代の影山の前で道化師的な役回りを
演じてる感じも、声を若く出すのではなくて
その頃の矢代が正に影山の前で本性を
隠しながらちょっと変わった同級生を
演じていたように…
BLの他のキャラで聴いてない、と言うのが
矢代と言うキャラのオリジナリティーを
醸し出せた結果も無論あるが、聴き終わって
一息つくと、どこにも力が入っておらず、
矢代として自然に声を出されていたな、
という印象が強く残った。

前日に書いたポイント方式で考えると、
私が存じ上げないので声質、BLスキル、
知名度は不明になってしまうのだが、
演技力とキャラの理解力がとても高い方
ではないか、と、初聴き~2回目を続けて
聴いてる中で思った。

原作読む時、無意識にこのキャラは
こんな感じの抑揚でこの台詞を話す筈、
と言うリズム・言い回し・強弱をつけながら
読んでいたりする。
音声化する・しない抜きにしても、音読
するように読んでいるんじゃないだろうか。
音声化された時に、真先に違和感を
覚えるのは実はこの部分で、キャラに
声が合ってない、と言う事より時に
優先されるべき重要事項だったりする。
大きく違う言い回しされるとそこで意識が
止まり、そうじゃないだろう、とか余計な
事を考えてしまって作品に没頭するのを
妨げられたりする。

聴き終わった時、矢代に関してはそう言う
台詞が一個もなかったな、と気付いて
良い意味で愕然とした。
あまりにも普通に矢代過ぎるのだ…
結果、新垣さんの八代を聴いている内に
登場人物たちの心情の動きが、原作を
読んでいた時には愚かにも気付く事が
出来なかった部分が頭の中で組み立て
られるように湧き上がってきた。

日高ショーコの音声作品に特徴的なのが
「ドラマCDを聴いているとコミックスでは
気付けなかった登場人物たちの心の
動きがよく解ってくる」
現象があるのだが
(私個人特有のものかもしれんが)
『嵐のあと』を聴いた後に、もう、ページが
擦り切れるんじゃないか、と言うくらい
繰り返し原作を読み返すさずにはいられなく
なったあの感じ、『花は咲くか』も同様で、
これは恐らく、原作者の作風にも大いに
関係していると思われる。
表情や台詞に内包されている情報量が
あまりにも多すぎるのだが、人間と言う
ものは悲しい事に、ビジュアルとして
目で見てしまうと見ているものに
囚われてしまう習性があり、話を追うだけで
読んだ気になっている、と言う部分を
「音だけの情報」にされると、声優さんの
声の抑揚が示している心情部分に
気付かざるを得ない、と言うか。

音声作品がそう言う風に出来上がる、
と言う意味で、日高ショーコヨネダコウ
作品全体を構成する方法が似ているのかも、
とも思った。

原作コミックス1巻目では巻末に収録されている
『漂えど沈まず、されど鳴きもせず』をトラック
2つ目に持ってきたのは、原作未読で聴く
人が時系列やキャラの関係性で混乱しない為の
配慮だろう。
私はTwitterのフォロワーさんが絶対に
あなたが好きな作品で、まだコミックスは
出ていないので雑誌掲載分を読ませてくれる、
と言う有難い申し出をして頂いて、1話目から
4話目を読んでから、この作品目的で
イァハーツを毎号買うようになってしまった。
連載として読んでいる中で読んだ『漂えど~』が
物凄く切なくて、その切なさは頭では解るし
矢代の基盤を作った過去話が本編合間に
モノローグ的に差し込まれるだけではなく
きっちり読めて、矢代の現在がどういう経過で
こうなったか、想像の域を出て実際に
読ませてもらえると言う面でも特別な
一話だな、とは…頭では解っている、と言う
程度だったんだな、と言う事に気付かされた。
矢代の一言一言をこのトラックを聴く事で
本当に胸が詰まる思いが湧いてきた。
性と感情を切り離していた矢代が、初恋に
気付き、その相手である影山に孤独な
自分を気付かされてしまったことへの
涙なんだな、くらいにしか考えられて
いなかったんだなぁ…自分の読解力は。

矢代は決して自信を卑下したり悲嘆したり
していないのだが、それは矢代が既に
高校生になるまでに精神的に何度も叩きのめされ
続けた結果強くある事が出来ただけで、
本当は孤独に強いと思い込んでただけの、
やっぱり十代の繊細な少年だったんだな、
それを自分を憐れんで欲しくない、と一番に
願っていた影山に気付かれてしまった事への
絶望と、性と切り離している筈のものが
こんなにも強く結び付けられているのに
性とは別の、ただそこに在るだけの
影山への想い…

自身が信じていた筈の自分の内面の矛盾。

矢代はただ悲しかったんだな…と思うと
このトラックの重み、含んでいるものが
湛える矢代の気持ちがただただ切なくて
泣けた…
これだけ肉体的には淫らに汚れてるのに、
純粋に同性を愛せる自分と言うのを自覚して、
自分の影山への感情を性欲だけで片付け
られない自分を自覚して悲しかったんだろう。
肉欲が欲するから影山を愛したのでは
なかったという…
肉体的にどんなに擦れ様とも純粋なものを
持ち続ける自分の心の奥底にあるものに
まだそこにあるのか、と言う絶望感の含めて。
音声で聴いて初めて、矢代の流す涙が
どれほどの悲しみや切なさだっただろうと、
新垣さんの声を聴いていて物凄く考える
結果となって自分の中にあった。
(端的に、性的に同性と事を行っていると
 しても、セックスにおいて限りなく同性愛の
 傾向が強いとしても、精神的・感情面では
 割り切っていて、同性愛者であるから
 同性とのセックスを好んで行っているのでは
 ない、と言う所が矢代の最後の砦だったのでは
 ないかとも思う。ホモで淫乱なんてシャレに
 ならないだろう…と。)
     (続く…
       ※敬称略

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