ことぶき猫玉日記

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zoom RSS 約20年ぶりの再読『黄金を抱いて翔べ』C

<<   作成日時 : 2014/01/16 23:04   >>

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日曜の夜、まあ寝る時間は月曜日なんだが、
一番爆睡できる日なので、これは最後まで読んでしまうと
寝れなくなるな、と言うので寸止めしたんだが…
涙が止まらなかったよ…モモ…
マークスの水沢の時も号泣したけどさぁ…
モモの笑い方の描写が既に予定調和だったけどさぁ…

男たちが金塊強奪する話、と言う大筋しか覚えてなくて、
モモの笑みを見て「ちょっと胸を打たれるものがあった」って
描写を読んだ時に予感がしてきて、なんとなく思い出してきて、
ああー、なのでその下りがくる直前で読むスピードが
ぐずぐずになっていったんだけども。
あの笑い方は、途轍もない喜びではなく、些細な、
本当に誰の日常にも適当に転がっていそうな位のレベルの
「楽しいな」くらいの喜びでもモモにはとても幸せなんだな、
ってあの感じが出ていて、ああー、この子幸せになんないかな、
と思いながら読んでたんだよ…
しかしある意味、至福ではあったんだろう。

その後の幸田の行動描写がさぁ…また泣ける。
現実として身が切れる思いを味わうのは仕事が終わった後だ、
的な…

どうにかしてモモが生きる道はなかったのか、
と思ってしまうから切なくて泣けてくる。
物語は覆らないし、現実の人間の死と同じく、
モモの死に奇跡は起こらないのも知っているが、
死んでほしくないと思うのは、魅力的な登場人物に
対する読者の感傷以外のなにものでもないかもしれない。

モモの死に、死んで解放されたよ、と言う気持ちが
起きないから悲しいんだと思う。
この先も生きていて欲しかったよ、と願ってしまうからだろう。

幸田が眠りに就く前、モモは目を閉じていた…
幸田が起きた時にはモモは目を開けていた。

一苦しみが襲ってきたのか(愛猫の時がそうだった…)
それとも、ずっと幸田の眠った顔を見てたのか…
断末魔に閉じられなくなった瞳なのか、それとも
ずっと開けていたからなのか…

モモはだいぶ前から自分の生に対する未来は
手放していた気がする。
そう言うモモのある種の達観を、人間のいない土地に
行きたいと思い続ける幸田を現世に引きとめていた気がする。
二人とも生への執着心が非常に薄い。
反面、北川や野田は生身で生きている感じがして、
幸田がモモを選ばない筈がないのだ…
自分と真逆のものに惹かれるか、自分と同じ匂いだけど
それよりも密度が薄そうで放っておけない気持ちが
湧くものに惹かれるか、どちらかだよなぁ…
同類相哀れむに似ている様で実は全く違う。
自分の行いだけではなく周囲の思惑や策略で
薄くなる生命の密度が薄くならざるを得ないモモは、
幸田の目には「儚い人」だったんだろう。

生きてて欲しかったよ、と思う人物に弱いんだよ…
こうしたらまだ生きてたんじゃないか、って不可能な
可能性を思ってしまう人に…

世の中を諦めたように生きている幸田が、大した理屈もなく
感覚的に、本当の自分もないようなモモだからこそ、
消えて欲しくない、と思ったんだと思う。
過去の過ちに囚われたままの自分の生よりも
その生が貴いと感じたんだろうなぁ。

他の人から見たら「薄幸な」と思ってしまう様な幸薄さを、
不幸せと思ってないままただ生きている人に弱いんだよ…
人を羨んだり嘆いたり、そう言う事さえしないほどに
何も持ってない、そう言う人。

幸田の気持ちがあるから、モモの死がこんなに哀しい。

国島を始末しようとか、ジイちゃんとモモどちらかを取るか、
と言う時でも、幸田はモモを殺さない選択をした理由を
「計画の邪魔になる方を優先する」と言う風に
思ってたんじゃないだろうか。
慎重に、綿密に計画を練っている段階で「人を一人殺す」
リスクの方が高いのに、なんでそっちを選ぶんだ、
と読んでた時にずっと思ってたが、それは根拠があり
合理的な選択ではなく、知らずに幸田が「モモを生かす方」を
選んでたからなんだよね。
計画の邪魔を排除する方を選択してる様で
困難な方を選んでいるように見える…
幸田はなぜそっちを強行するのか、その根っこに
あるモノの正体を気付いてない気がするんだよ…
気付くのは物語が終わった後じゃなかろうかと
と言う気がしてきた。
モモを生かしたい、と言うモモへの自分の愛情に。

箱寿司と牛乳は食い合わせ合わない気がするけど、
村先生のユーモアかな、とも思うが、あれは幸田と言う
生活感の全くない男が、自分が想いを寄せていると
気付いてるのかいないのかさえ解ってない男の為に
「滋養をつけさせてやろう」とだけ考えた結果の
チョイスなんだろう。
ふいに母親不在になって、子供たちのご飯には
なにをどう用意すればいいのか解らずにテンぱる
お父さんが「とにかく栄養のあるものを」と思って
用意した夕ごはん、と言う感じがする。
人の為に食事を用意した事がない人間が、
食い合わせと言うものがある事さえ知らないかの様に。

人間のいない土地へ行きたい
自分が十代の時に心の奥底でずっと思っていた事と
同じだな、と言うのも、ようやく思い出した始末だ。
その頃、周囲に馴染めない自分を殺すか、周囲が
全ていなくなるか、そのどっちかが実際に起きないだろうか、
と毎日毎日考えて通学の電車の乗っていた十代の自分。
過去の事には決してなり得てないけれど、どうもやはり
自分の中の繊細な部分と言うのがサビついていた様で、
そう言えば幸田が思う事は自分といっしょだった、と
やっと気付くような有様。
何かが凝り固まったのか、単に年を食って図太くなったのか、
その辺は自分でも判断しにくいが、逆に、今だからこそ
気付く事もあるに違いない。
それは間違いなく経験を重ねた事でもたらされ、
しかし経験を重ねると言う事が直結して年を取った、
と言う事ではないんじゃないか、と言う気がする。

DVD到着待てずに読み終えてしまった…
北川はずっと幸田の事を気にかけていて、
自分が彼の一番大切な人間にはなり得ないと
解っていても、見守っていたかったんだろうなぁ。
自分の家庭に飯を食いに来させたり、
春樹と関わらせたのも、どこかで、恋人みたいなものに
なれなくとも、家族みたいに、気に掛けるのが当たり前な
存在になりたかったのかもしれない。
そう言う所に幸田を巻き込もうと、彼なりにいつも
気を配っていたんじゃないだろうか。
恋愛とか友情とか、そう言うものが明確にならなくても、
幸田を見守っていたかったんだろうなぁ。

人間のいない土地などないし、自分の周囲から
人も消えない、と言う事がどうでもよいと思える
一番人間らしい形で、幸田はそこから解放されている。
モモがそう言う幸田を作り、北川が見守り、
ジイちゃんが幸田に自分の手で人を排除する事を
させなかったこと。
それら全てが幸田と言う一人の人間を救った、
そう思える読後感だった。
    (続く…

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